武士気分で深堀・城下町散策

12月といえば「忠臣蔵が気になる」という方も多いはず。今回の細道は、なんとその忠臣蔵と関わりがあるといわれている長崎市深堀町の十人義士の墓を紹介しつつ、歴史ある城下町を巡ります。鍛冶町バス停近くの郵便局裏にある恵比須像からスタートすることにしました。このサイケデリックな色彩に目を奪われます。漁業・商業の神様として古くから親しまれている恵比須様にまず一礼。

 

 

 

 

 

 

深堀の歴史は縄文時代(!)にまでさかのぼります。土器や石器などを常設展示している深堀貝塚遺跡資料館を始め、深堀鍋島家墓地や陣屋跡などが点在し、壮大な歴史ロマンを感じることができます。深堀氏の始まりは深堀(三浦)仲光で、その子能仲が地頭として下向したのが建長7年(1255)のこと。天正15年(1587)、18代純賢のときに佐賀藩の家老職を勤め、深堀姓を鍋島姓に改めます。城下町入口には東屋敷、中屋敷、西屋敷などがあり、さらに中・下級武士の屋敷が続き、一番奥に陣屋があったといいます。江戸時代に存在したであろう城下町を連想しながら散策しましょう! 陣屋跡の石碑もありますよ。

 

このでこぼこの壁、思わず触りたくなります。気軽に(?)史跡に触れることができるっていいですよね。白の漆喰とエコロジーカラーの石とのコントラストがなんだが可愛いらしい石塀です。

 

深堀武家屋敷跡の石碑とともに、1998年に深堀石塀として都市景観賞と刻まれた記念碑も発見。

 

深堀武家屋敷通りを後にして徒歩で2、3分で深堀小学校に到着。小学校の通り沿いにはビオトープがあり、ベンチでくつろぎながら草木にふれあうことができます。

 

ビオトープといえば癒しの空間。小川のせせらぎを聞きながら放流されている鯉を見ることができます。それにしても鯉クンたち、丸々と太って潤ってますね……。

 

ビオトープからさらに徒歩で2、3分先へ進むと菩提寺にたどり着きます。菩提寺の創建の時期は残念ながら不詳ですが、境内には深堀鍋島家代々のお墓があり、前に書いた能仲が同寺を建立したといわれています。

 

十人義士の墓は、お寺入口の左側にある坂道を上っていった方がわかりやすいかと思います。少々しんどい坂ですが、到着まで徒歩1分ほど!

 

坂道を上ったすぐのところに見えるのが、今回のオススメスポットでもある十人義士の墓。元禄13年(1700)、深堀家の家臣深堀三右衛門と柴原武右衛門の2人が、町年寄高木彦右衛門の屋敷に討ち入りし、彦右衛門とその家来たちを殺害した事件。後に長崎喧嘩騒動と呼ばれるわけですが、喧嘩の原因はというと……。雪解けのぬかるみで三右衛門の枝が滑り、そのはね泥が彦右衛門の仲間・惣内の合羽にかかったのがきっかけ。その場はおさまったものの、しばらくして浦五島町(現五島町)にあった深堀屋敷に惣内らが押し入り、三右衛門と武右衛門の刀を奪ってしまった。今度は高木屋敷に三右衛門らが討ち入りをして、討ち入り後、三右衛門は高木屋敷で切腹、武右衛門も大橋(現在の鉄橋)で切腹してまった。翌年、応援にかけつけた10人の仲間も切腹、9人は五島へ流罪となり、一応の決着はつくのですが、切腹のきっかけが着物に泥がかかったこととは……。忠臣蔵の大石内蔵助は、家来をつかわすなど吉良邸討ち入りの参考にしたといわれていて、1年後にあの赤穂浪士の討ち入りが起きてしまうのです。

 

真ん中に三右衛門と武右衛門の墓碑があります。忠臣蔵ではよく「武士道とは何ぞや」と議論になりますが、この深堀の武士たちも同じことを感じます。私がその場にいたら、どうするのだろうか、なんて思いも。いろいろと考えさせられる事件でもあります。

 

菩提寺を下りてすぐのところでニャンコから「こっちにも偉人さんのお墓があるよ」と案内されましたので、細路地を歩いてみたところ……。

 

五官の墓がありました。寛永14年(1637)に没した中国商人の五官は、江戸時代に御朱印船主として活躍しました。五官はこの墓地付近の土地を購入し、没後も祠堂料として、この土地に寄付したといわれています。お金持ち……そして長崎を愛した偉人さんともいえますな。

 

最後はドピュ~ンとワープして、長崎市の法務局のお隣へ。こちらは大音寺坂(または天満坂)と呼ばれる小さな石段の坂なのですが、ここがはね泥の現場なのです! 高木彦右衛門といえば、当時は唐蘭商売元締の役職に就き、長崎の筆頭町年寄であったほどの大物。きっと討ち入りを決めた瞬間から深堀の武士たちは死を覚悟していたはず。彼らの貫いた武士道とは何なのか。冬の寒さを感じながら考えてみたのでした。

 

今回の細道は……長崎市深堀地区

歩いた時間:恵比須様~菩提寺(十人義士の墓)まで徒歩約10分


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