ながさき大漁旗! 対馬特派員|鍵本泰志|2016.2.2
父との想い出 手作りイカ型でイカ曳き
我が家の茶の間のなげしには、古い餌木(えぎ)が掛っています。これはイカを釣る目的で作られた古くからある疑似餌で、私が子供の頃はイカ型と呼んでいました。
現在ではホームセンターの釣り具コーナーや釣り具店に行けば、色鮮やかな餌木がたくさん販売されていますが、昔はこのように木片から削りだし、色を塗って手作りしていました。手先が器用で釣り好きだった父(故人)は自分で作ったイカ型でミズイカ(アオリイカ)を釣るのが趣味で、小学校3年くらいから私も良く連れて行ってもらいました。
父は伝馬船(てんません)と呼ばれる櫓漕ぎの小さな船を持っていました。船尾で片手で櫓を漕ぎながらゆっくり船を走らせ、もう一方の手でイカ型の仕掛けをしゃくりながら釣っていた姿を思い出します。帰港するときに櫓を漕ぐのは私の役目。小さい体でエッチラオッチラと漕いで帰っていました。
釣果は季節や潮の流れもありますが、イカ型の出来に左右されるので良く釣れる物は本職の漁師さんが売ってくれと言ってました。そんなとき、人が良い父は惜しげもなく無料で上げていましたから我が家に残っているイカ型はこの3本だけとなりました。
スーパーの鮮魚コーナーには大きなミズイカが販売されていました。大きなものは2,000円を超える値段がついています。子供の頃は父のおかげでミズイカはもちろん、サザエやアワビ、ウニなども買うものじゃなくて食べたければ自分で獲るものだったのですが、現在では買うものになってしまったのはさびしいですね。
なげしから父が削ったイカ型を降ろして手に取ってみると「おーい、ミズイカ曳きに行くぞ」という父の声が聞こえたような気がしました。
(大きなアラカブ(カサゴ)がヒットした瞬間 竿先が大きくしなっています)
今回取材に訪れた曲崎は、夕方に小アジを釣り、暗くなるとそれをエサに電気ウキの仕掛けでヤリイカが釣れ、10月を過ぎるとアオリイカのジギングも盛んに行われている場所です。
釣れたら嬉しい。釣れなくてもそれを楽しむ。その気持ちの持ちようが勉強になった取材でした。
対馬特派員 鍵本泰志