島の細道 五島特派員取材|ナカムラ|2013.2.6
海を渡る道
五島の人にとって思い入れのある道はいろいろあります。そんな中で、歴史も、たくさんの人の思いもつまった「海の道」をご紹介します。
それは、五島~長崎を結ぶフェリーの通り道。1990年に高速艇「ジェットフォイル」が就航し、五島~長崎の所要時間は80分にまで短縮されましたが、金額的にも、歴史の長さでも、島の人にとっていちばん身近な存在はふつうの「フェリー」だと思います。長らく「フェリー五島(1971年就航)」や「フェリー長崎(1982年就航)」が活躍していましたが、老朽化に伴って、2011年3月、新型船の「フェリー万葉」が、翌2012年12月には「フェリー椿」が就航しました。新型船だけあって、乗り心地は快適。以前の船より揺れも少ないです。船の進化とともに五島から本土への旅も変化してきたんですね。
ただ、五島が海に囲まれた島で、そこを出るには海をわたる長旅が必要という事実は変わりません。学校に行くために、または仕事をするために、家族を離れる。夢をかなえたくて、住み慣れた土地を離れる。島の中学生や高校生にとっては、部活の大会などに参加するためにも、海を渡らなければならない。寂しさや、期待や、不安。時代が変わっても、たくさんの人のいろんな思いがつまった道がこの海の道なのだと思います。この春も、新しい学生や新しい社会人が、この道を通って本土へ旅立つのだと思います。わたしの経験で言えば、この「海をへだてている」という距離感があるからこそ、都会に出た五島の人たちは、逃げられないぞ、負けるもんか、とがんばるんだと思います。この春島を離れる若者たちにも、どうかへこたれずに、がんばってほしいです。(もちろん、へこたれたときは、島に戻ってきてまた元気をだしてほしいです。そのために船は速くなり、帰ってきやすくなっているんですから。)