厳原港の南、久田地区に「お船江(おふなえ)」と呼ばれる静かな入り江があります。こちらは寛文六年(1663年)対馬藩によって築かれた人口の入り江で、釜山や大阪、長崎博多などを航海した御用船はここで船大工たちにより手入れされ、次の航海に備えました。
朝鮮交易により莫大な利益を得た対馬藩にとっては、貴重な交通手段だった船の格納、修復施設とあって石積みの突堤も原型を保ったまま残され、現在は舟グローで使用する櫓漕ぎの和船が係留されています。満潮時には大型の木造船が出入りできる水深となり、干潮時には干上がるように造られているのですが、350年たった今でも変わらずにその機能を果たしています。
水辺にたたずむと聞こえてくるのは、風にそよぐ木々の葉音と小鳥のさえずりで、とても静かですから、のんびり過ごすには最適な場所ですよ。
対馬特派員 鍵本泰志