2011年に始まった対馬アートファンタジアも、今年で5回目。毎回、日本や海外のアーティストによる斬新な作品が展示されています。そこで今回も楽しい現代アートの数々を2回に渡ってご紹介。最初の会場は、2013年に廃校となった対馬市久田小学校内院分校。懐かしい木造校舎では、対馬の自然や歴史をテーマにした作品を見ることができました。
まずは、広島を拠点に活躍している入江早耶さんの「CaCo3」古来より真珠の産地として名高い対馬ですが、真珠と同じ成分の炭酸カルシウムを含んだチョークを利用して、海神の娘「豊玉姫」を表現しています。その視線の先にある黒板には、対馬の山々やキラキラ光る海。そして豊玉姫が祀られている和多都美神社の鳥居が描かれています。
次は様々な素材を使い扇風機で動きをつけたアート作品が多い黒田大祐さんの「幻日」(LED・運動場)幻日(げんじつ)とは、太陽の横に現れる大気現象のこと。窓側に置かれている椅子に座って外の景色と教室内の作品を見ることで幻の太陽を表現しています。運動場の楕円形と対をなすLEDの輪は扇風機で動きながら、色が変化していました。
映像で表現しているのは、中国、上海生まれの潘逸舟さんの「ミュージカル・チェア」。干潮時に姿を現す瀬での椅子取りゲームの映像と、その裏側のスクリーンでは満潮時に海面下に沈んでしまった瀬が映されていて、領土問題や境界線の曖昧さを問いかけた作品でした。
真っ暗で様々な学校備品が置いてある部屋には、小さくて丸いネオンと扇風機が何やら怪しい光を放っていました。黒田大祐さんの「幻日・風・ネオン」まるで、ゲームの中の秘密基地もしくは廃墟を連想させるような空間ですね。
次の教室も黒田大祐さんの「幻日・ビデオ」運動場に幻日をイメージした楕円が描かれる様子のビデオでした。
友定睦さんの「どこからきたの。どこへいくの」 対馬にひっそりと佇むお地蔵様。その前掛けをめくると人の像が彫られていて、隠れキリシタンの伝説が残る話をモチーフに映像化された作品。その像を演じる女性が波打ち際を行ったり来たり。マリア様でしょうか?
校舎の廊下まで続く古材の海流の先には、対馬がありました。彫刻家の伊東敏光さんの「海流の島」と会場の廃校がある内院地区の山と入り江にある女神が住む島、納島をモチーフにした「内院周景」
黒潮の支流が、日本海に流れ込み対馬暖流となって北上することから対馬は海流の島といえるでしょう。九州本土からフェリーに乗って来島すると圧倒的な海のパワーを感じます。それを彫刻家らしい感性で表現されていますね。
対馬アートファンタジア2015②へ続く 対馬特派員 鍵本泰志