今はどうなのか知りませんが、以前、福江港の大波止ターミナルでフェリーやジェットフォイルの入港・出港ごとに流れていた「岐宿の子守唄」のメロディー。曲の名前はわからなくても旋律を聴けば、あぁ、あの歌ねーと耳に残っている方も多いと思います。
この曲は、五島を代表する郷土史家の故・松山勇さん(平成19年没・享年79歳)が、岐宿で歌い継がれていた子守唄を採譜、補作したものです。
松山さんは岐宿町役場に勤務している時から、五島、特に岐宿の伝統や伝説、言葉などに強い興味を持ち各地区の古老たちを訪ねては、廃れかかっていた風習や文化、芸能などを採集していました。松山さんは岐宿町の教育委員長から岐宿町助役を勤め上げられて現役引退された後も、精力的にライフワークの五島文化遺産収集を行っていました。
特に、岐宿の子守唄を教えてもらうときは公民館に集まってもらい、酒を汲み交わしながらめいめいに歌ってもらったそうです。一人が歌って歌詞に詰まると誰かが引き継ぎ、また他の誰かがうろ覚えを歌いだすという作業の繰り返しをやって、どうしてもわからない箇所のみ松山さんが補作して、やっと完成した歌を松山さん自身がレコーディングしました。
これは松山さんが生前出版された本です。いずれも今は貴重な五島文化遺産です。
右の「五島の伝説・昔ばなし」の挿画は、松山さんの三男、松山巌さんが描きました。
松山巌さんは歯科技工士をやりながら、油絵や水彩画を描かれています。特に水彩画は公民館口座を受け持って後進の指導に当たっています。
今回の、松山勇さんに関する話や資料は、松山巌さんにご協力いただきました。
五島特派員 庄司好孝