ある時、「原油を海底に敷いた管で目的地まで送る」というアメリカのニュース映像を偶然観た関係者が、同じ方法で水を運べないだろうかと思いつきました。しかし、当時の日本では先例がなく、島の海底には工事を阻むであろう岩礁の存在もありました。また、波も荒い上に海域の深さは40M以上もあったのです。このような事情から、難問山積となっていた水問題でしたが、当時、豊富な出炭量を誇っていた2つの島のためにと、長崎県が中心になって専門家を交えた調査が行われました。
その結果、軍艦島の対岸にある為石・土井首・川原の3カ所を水源として昭和31(1956)年に工事が始まり、昭和32(1957)年、ついに完成。 こうして高島と端島は、どこの家庭でも自由に水を使えるようになったのです。
三和町為石浄水場
ところで、この時の海底水道の成功は、思いがけないおまけ付きでした。 難問とされていた場所での海底水道の実現により、他の地域でも工事の施工が続きました。そして高島と端島の工事を行った企業は、日本のみに留まらず、海外にも進出し、大きな成果をあげることができたのです。