現在の軍艦島は無人島で、建物の崩落も多いため何となく不気味なムードが漂っています。
その昔、軍艦島の中では毎月決まった日になると、アパート群のあちらこちらから、カランコロン、カランコロンと言う音が響き渡ったと言います。島に引っ越して間もない人にとって、正体不明のその音はまさに恐怖。怖さのあまり迂闊に人に訊くのもためらわれ、しばらくの間その日が来るたび震えていたものだそうです。
やがて音の正体が判明。島に響く「カランコロン」という音は、下駄の音でした。この音が響き渡る日は、軍艦島で働く鉱員たちの給料日。島内では、日常の買い物はまとめて支払うことが多く、給料が出た日には各家の奥さんたちが支払いに駆け回ったものなんだそう。
「幽霊の正体みたり枯れ尾花」…島中に響いたカランコロンの音は、家計を預かる女性たちが履く下駄の音だったのです。