軍艦島物語⑨ 〜島の暮らし 潮害〜


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 前回の水問題も島の暮らしの中では重要なテーマでしたが、周囲を海に囲まれた島の宿命とも言える「高波」との戦いも、のどかさと過酷さが背中合わせになっており、軍艦島でも長い間繰り広げられたバトルでした。

 長崎の沖合いに浮かぶ南北約480m、東西約160mの小さな島、軍艦島は、少し大きめの台風や高潮の度に島内は水浸し。子どもたちの通学路はおろか、アパートにも海水が入り込み、階段や坂道は水に濡れて危険極まりない状態でした。

 そのために島内では危険防止策として綱を渡し、それを掴んで上がったり下りたり…。しかし、いつまでもこの状態ではいずれ事故が起きかねないと改修を繰り返した結果、軍艦島のアパートには様々な工夫が施されました。

 完成した年代により機能はそれぞれ違いますが、海に面して並ぶ建物は海側の窓を小さくし、廊下には潮を防ぐ鉄製のシャッターが設置されるなど、生活空間であると同時に防波堤に近い役割を持ちました。当時、最先端の技術を持って建てられた軍艦島の高層ビル群は、炭坑に働く人々の生活の場を確保すると同時に、台風や潮害に対する耐久性、また防火面での安全性を確保する役割も担っていました。

 もっとも、島に住む人たちは少々の高波には慣れたもので、「今日のはすごかね〜」「いや、前のとがもっと高い波の来たばい」と、白い波しぶきを見物していたようです。

 苦肉の策だった潮害対策の建物群ですが、最近ではクイズの問題になるなどしています。相変わらず根強い人気を誇る軍艦島ですが、実に様々な切り口があるものですね。

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