きっかけは一枚の貼り紙からでした。
これを目にしたとき「クワさんって誰?」と疑問符が頭の中を飛び交いました。
貼り紙には”美津島町に昆虫館ができました。”と書いてあるので、さっそく尋ねてみると笑顔でやさしそうな男性が出迎えてくれました。
自宅を改装した館内に入ると、壁やテーブルの上に世界の美しい蝶や巨大なカブトムシ、対馬でしか見れないクワガタや絶滅危惧種のトンボなどが展示してあります。別室にも展示しきれていない標本が山積みしてあり、その量に驚かされました。
クワさんこと相浦正信さんは佐賀県出身の68歳。小学校5年の時、夏休みの宿題で身近に16種類ものトンボがいたことを調べ発表したら先生にほめられ、それが嬉しくてさまざまな昆虫に興味を抱くようになったそうです。
大人になり防衛庁(現防衛省)の職員になった相浦さんは、休暇を利用しフィールドワークを続けていましたが、自然豊かで昆虫研究に最適な対馬、奄美、沖縄の3ヶ所に転属希望を出していたところ、35年前に念願の対馬へ配属され、以後退官された後も対馬に残り研究を続けてきました。
相浦さんになぜ、この昆虫館を開かれたのかお尋ねました。
「対馬には固有種、特産種を含め多くの貴重な昆虫がおり、中には人為的な理由で絶滅したと見られる種もあります。それらを世界に向けて発信し、皆様に知っていただくことで自然と向き合うきっかけとなり、環境を考えることに繋がれば嬉しいです。」
「また、今まで人間の利便性のために環境をないがしろにしてきた大人達に変わり、この昆虫館で子供たちが自然に興味を持つことで、将来は自然を守り育んでいけるような人になって欲しい。それが本来の教育ではないでしょうか?」
「対馬は大陸性の動植物が多く見られ、海抜0mから山頂まで自然が豊かです。しかし絶滅危惧種に指定されているものも多数あり、それらを保護する必要に迫られています。私の夢は対馬をユネスコの自然遺産に登録することですが個人の力では限界があります。私の研究成果を世界中に発信することで、対馬のことを知っていただき実現できることを願っています。」
私がお話を伺っている間にも、地元の家族連れや関東からの来館者がいたりと昆虫が好きな方や研究者には知られている様子の相浦さん。いきなり訪れた私にも何故、対馬には大陸系の特産種や固有種の生物がいるか氷河期までさかのぼり、解りやすく説明してくれました。
対馬は特産種(日本では対馬にのみ生息)のクワガタがいて全国のマニアには有名ですが、来館者にもそんなクワガタの採取方法など教えていましたよ。興味がある方はぜひお訪ねくださいね。
場 所:クワさんの「昆虫館」 対馬市美津島町鶏知(けち)甲738-26
連絡先:電話0920-54-4569 相浦正信氏まで
日 時:毎週土曜・日曜の13:00~18:00
アクセス:厳原から国道382号線を北上、美津島町の十八銀行を左折し県道24号線を進む。左手コスモ石油の手前を左折、橋を渡り右折。老人ホーム浅茅の丘をすぎ細い路地を右折。(厳原町から車で15分)
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